http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0809/24/news009.html
9月22日、NECが報道発表した”ソフトバンクモバイル向けフェムトセルシステム受注”
は、一部の業界関係者にはとてつもなくインパクトのあるニュースだった。
これまでの経緯
元々、SBMがフェムトセルに乗り気だったことは過去の経緯からも周知の事実だった。
参考記事
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/35292.html
http://japan.cnet.com/mobile/story/0,3800078151,20352063,00.htm
ソフトバンクモバイル取締役専務執行役員兼CTOの宮川潤一氏による、一連の
プロモーション活動(?)によって、Softbankはフェムトセルサービスの先駆者
というイメージをここ1年半ぐらいで築き上げてきた。
そして、その結果「ソフトバンク、来年1月にフェムトセル商用化」という発表を
行うところまでこぎ着けたわけだが、これはもの凄いことだ。
Softbankの発表のすごいところ
実はサービスを開始するに当たって課題となっている
関連法案(電波法、電気通信事業者法)の改正自体はまだ最終決定が
下されていない。(勿論、大まかな方針は出ている。総務省のHPを参照。)
この10月にお目見えするというのが大方の見方なのだが、そこから
2ヶ月でSoftbankは商用システムおよび業務を整えるというのだ・・・恐ろしい。
今回の報道発表にあった、NECのフェムトセルシステム自体は既に出来上がって
いるというのが大方の見方である。iPhoneをSoftbankが出すと発表したのが
発売の1ヶ月前だったのと同じく、極秘裏に進めていたものをゲリラ的に発表した。
実際の所、Iub over型のdocomoに関して言えば、インターネット網経由で
自社網に接続するためのGWを用意すればいいだけなので、Softbankほどの
設備投資は必要ない。しかしながら、商用サービスはSoftbankが一足先に始める
ことになった。
Iub Over型とIMS型の違い
つまり、docomoとSoftbankの違いなのだが・・・完結に違いを述べると
Softbank(IMS型)
フェムトセル専用のコアネットワークを構築する。
要するに、インターネットプロバイダーなどが提供しているIP電話と同じ設備を
新規に構築して、それを既存コア網と連携させる形を取る。実は3G無線を使った
IP電話なのだ。。。ひかり電話などの既存固定網の番号を050と置き換えて利用
できるのと同じ仕組みで、090や080の番号を050と置き換えていると考えられる。
メリット
・既存網側へ負荷が掛からない
・将来、ブロードバンド、固定電話、携帯電話などをIMSコアで統一できる。
(Yahoo!BB、Softbank Telecom、SoftBank Mobileを同一NW化)
・SDP(IMS上でサービスを行うための基盤)を用いてサービス展開が可能。
デメリット
・システムへの投資額がかなり大きくなる
・既存網内でしか使えないサービスは使えなくなる
docomo(Iub Over型)
フェムトセルはインターネット経由でドコモ網に接続し、RNCに直結する。
(つまり、普通の基地局装置と同じように呼制御する装置につなげる)
その為、インターネットからドコモ網に接続するためのGWだけを新設するだけでよく、
メリット
・サービスを始めるために必要な投資はかなり少なく済む。
・今現在行われているサービスは全てそのまま利用が可能となる。
デメリット
・フェムトセルが爆発的に普及した場合、既存設備への負荷も爆発的に増える。
考察
要するに、この違いは両社の立場の違いがあるとも考えられる。
両社の違いはアプローチの差でしかなくて、
既存網に追加してから、既存網をIMS網に変えていく(docomo)のか、
将来を見据えてIMS網で構築しておき、将来的に統合する(softbank)
の違いしかない。
(実際、Iub Over型ではSDPの恩恵にあずかれない・・・わけではないので。)
細かいことを言えば、Softbankのフェムトセルではオーバーロード
(インターネットへのアクセスはブロードバンド回線側に逃がす)が可能
などという違いはあるけれど、それは些細な違いでしかない。
実際の所は、使える電波が2Ghz帯しかないためエリアカバー率で劣る
Softbankにとってはフェムトセルの導入が急務であったこと、
しかしながら、Softbankのコア網は爆発的なフェムトセルの増加には
耐えられない、などの事情があったのだとも思う。
(Softbankがつながりにくいと言いたいわけではなく、電波特性上800Mhzも
使えるdocomoやauの方がどうしても物陰や屋内でつながりやすくなるのだ。
かくいう私もSoftbankユーザであり、別段不満はない。)
また、短期的に見れば、フェムトセルをキーデバイスにしたサービスには
差がでることも確かだ。Softbankは公約通り、フェムトセルホームサーバ
を用いた様々なサービスを打ち出すだろう。
これは、Iub over型を採用するdocomoにはちょっと真似しづらい戦略だ。
(装置特性上、とでもいいますか。Iub Over型のフェムトセルは要するに
ちゃんとした基地局の顔つきをしないといけなくなるため。あくまで推察。)
しかし、上記に書いたとおり、長期的には大きな違いはないのだ。
Super3Gがドコモの主力サービスに育つ頃には、必然的にドコモの
コア網はIMSコアになっているのだから。
どちらかと言えば、来年1月からサービスを始めるSoftbankに対し、
docomoがどこまでサービス開始時期(もしくは大規模トライアル)を
早められるかの方が重要になる。
docomoにとって、実はフェムトセル自体はそれほど重要ではない
(なんせ、人工カバー率は公称100%なのだから。)という背景もあるが、
半年も遅れれば、Softbankに先行者益を大幅に刈り取られるだろう。
というか、イメージ的な”技術的敗北感”がぬぐえなくなってしまうだろう。
また、既に”無料で配る”という形が有力視されるSoftbankのフェムトセル
に対して、docomoのフェムトセルはどの程度の値付けがされるのか?
また、お互いのサービスの違いは?ランニングコストは?など、まだまだ予断
は許さない状況である。しかしながら、これだけは言える
Softbankが明らかに魅力的なサービス内容と利用料を整えてきた場合、
docomoは何ヶ月かはそれに対する有効な手が打てない上、遅れてそれに
追随することになる・・・ということだ。
逆にdocomo的には次の端末からWLANを標準搭載にして、ホームUを全面に
押し出すという手もある。907iでのWLAN搭載端末に期待だ。
今後のフェムトセルを含むインドアソリューションからは目が離せない。