いつか来ることは分かっていた別れの日。
今日が最後の練習なのだ。再びこの体育館に立つことはあるだろうけど、その時の俺はもう女子バレー部のコーチではない。
この1年間は本当にいろんなことがあった。楽しかったこと、悲しかったこと、嬉しかったこと、悔しかったこと……本当に、辛いこともたくさんあった。そうやって文字通り苦楽を共にしてきたからこそ、なお別れの時はツライ。
練習以外でも、海へ行ったり、バーベキューしたり、花火したり、勉強も見たこともあったし、芋を焼いたこともあった。この前も焼き肉食い放題に行ったし、教え子の一人の和太鼓の公演を見に行ったこともあった。なんか、そう考えると、部活動を越えていろんなことをしてきたんだなぁって思う。
そんな彼女らが、送別会兼菓子パで俺に就職祝いをくれた。
ポーターの財布とキーケース。バーバリーの靴下。
そして、各人の手紙と色々な写真が収められたアルバム。
その場では泣かなかった。ちょっと泣きそうだったけど、なんだかこれで終わりって言う実感が無くて、泣けなかったのかもしれない。きたのは、その後だった。
車に乗って、ふと考えた。
これで、最後なんだ。明日からは東京なんだ。
今まで毎日の様に顔を合わせていたのに、もうしばらく会うことは無いんだ…。
もう、明日の練習の内容や言うことを考える事もないんだって…。
ただ、悲しかった。
家で彼女らからの手紙を読んでいる内に、自然と涙が止まらなくなった。
どうして良いのかわからずに、ただ精一杯頑張っていた日々。
俺のデリカシーの無さが災いして、反目しあった日々。
何度も、自分がコーチで良かったのかと自問していた日々。
そんな日々が、一気に報われた気がした。
彼女らは
指導者:北 真也の最初で最後の教え子で
53期OB:北 真也にとっては、夢であり、希望であった。
ただの人:北 真也にとっては、かけがえのない、大切な仲間だった。
やはり、分かり切っていたことだが
ありとあらゆる別れの中で、この別れが一番辛かった。
コーチをやって良かった。辛くても、辞めなくて良かった。
彼女らと出会えて良かった。バレーボールを好きで良かった。
さようなら、ごめんなさい、そしてありがとう。
君たちと過ごした1年間は、俺にとっては一生の宝物です。
【元バレーコーチの最新記事】